2021年11月24日水曜日

Denis Gaultier の2冊の曲集

 Denis Gaultier (1603-1672)の2冊の曲集

Pièces de luth de Denis Gaultier, sur trois differens modes nouveaux ....

Livre de tablature des pièces de luth de Mr. Gaultier Sr de Nèüe ....

いづれも Denis Gaultier (1603-1672)による1670年頃の出版ですが、Livre de tablatureの方が後です(緒言から分かります)。また、この表紙には未亡人による出版とあるので、出版時にはGaultierは亡くなっていることが分かります。

この2冊の曲集は、それ以前のGaultierの作品が、国内外で酷く変形され原形が損なわれていることを嘆いたことに由来して世に送り出されています。なので、これらの曲集はGaultierの作品のバイブルとなります。

ただ、必ずしもGaultierの意向を全て漏らさずに表現した曲集とは言い切れません。Gaultierが渡した原稿はその通りだったかも知れませんが、出版業者に彫版を委ねたその先で、誤りが混入してしまったようです。

例:写真の左下のSarabandeは右手の奏法記号に誤りが散見されます。そうとは知らない私は、Gaultierの指示なのだから忠実に従おうとしていたのです。弾き難いと感じるのは私の技量の問題かと。佐藤先生のレッスンの時に指摘されて気付かされました。


さらには、幾つかの曲では装飾記号や運指記号が記されていないものがあります。それらが殆ど書かれていないLa Rhétorique des Dieuxに含まれる曲と比べてみると良く分かります。この2冊の曲集は全体的に装飾記号・運指記号が丁寧に書かれています。しかし、全くと言っていい程に書かれていない曲が含まれるのは不自然です。Gaultierが原稿に書き忘れたとは考え難いです。

全く意味不明なのが、写真の右下のCouranteの最後のaccord des pièces suivantes
様式はバス弦の調弦法の書き方ですが、Gマイナーの曲に対してこれは全く間違っています。

ただ、Livre de tablatureはGaultireの死後の出版なので、Gaultierの原稿が未完だったことも考えられます。

とは言え、これらの曲集がGaultierの作品のバイブルであることには変りありません。

ちなみに、Gaultierが嘆いた様子は、小川先生の紀要に詳しく書かれています。

「17世紀フランス・リュート音楽研究(1) : ドニ・ゴティエの2冊のリュート曲集の緒言をめぐって」 小川 伊作 1989



2021年10月29日金曜日

モダン・タイプ譜

 モダン・タイプ譜は読み易いので広く使われているようです。しかし、ネット上で提供されているものは書き間違いが散見されたり、入力が雑であったりしますので注意が必要です(フリーのものに限りません)。まずは、鵜呑みにしないようにしましょう。
ただし、タブラチュア・エディタのソースファイルが提供されている場合は、すごく重宝します。自分でゼロから打ち込むのは面倒ですが、予め、一通り打ち込んでくれているので、後は、間違いを訂正するだけですみます。さらに、自分の楽器の調律に沿ったポジション変更も反映したタブラチュアが作れます。

例:Gaultier, Livre de Tablature, Pavanne.

  この曲は装飾記号と運指記号が数か所間違っていました。以下は1例です。



2021年10月13日水曜日

Livre de tablature des pièces de luth, Gaultier

 Gaultier, Ennemond / Gaultier, Denis 

Livre de tablature des pièces de luth de Mr Gaultier Sr de Nèüe, et de Mr Gaultier son cousin, sur plusieurs différents modes avec quelques reigles qu'il faut observer pour le bien toucher. Gravé par Richer. 

BNF Gallica に公開されているファクシミリをクリーニングしてみました。

Minkoff から出版されたものと同等レベルになっていると思います。


Sample  p.42

 

オリジナルはこんな感じです。くすんでいて、コントラストも弱いです。

Original from Gallica.bnf

 

まず、線や文字はそのコントラストを保持しながら、バックグランドのノイズを落とします。そして、モノクロ化。何か、か細い感じがします。

Noise Suppression & Monochromnize


黒っぽいものはより黒く、白っぽいものはより白くします。メリハリが出てきました。ハーフトーンだった線や文字の境界画素が黒くなるので、少し太くなります。これでも十分使えます。

Contrast Compensation 


譜面台に置いたとき等、離れた位置からでも見やすいように、さらに、線や文字を太めにしました。

Augment lines and characters thickness


こちらは、Minkoff の該当ページ。

Reference Minkoff


2021年9月12日日曜日

ファクシミリの湾曲を補正

 厚く製本された曲集をカメラで撮影したり、スキャナーでスキャンするとき、本の閉じ代部分が湾曲しているので、得られた画像では直線であるべき水平線が湾曲してしまいます。

この湾曲してしまった部分を元に戻すソフトウェアは市販されていますが、変形のし方が多様なファクシミリ画像には使えないことが多いことは想像がつきますので、自分でプログラムを書いてみました。

DufaultのPaduana (Rostock)は、左側1/6程度だけが変形しています。しかも、上部はほとんど変形しておらず、下方ほど大きく変形しています。これでは、既知の定型的な手法はそのまま使えません。

Original

2次関数を使って工夫を加えた補正式を考えてみました。もっと高次の関数が必要かとは思いましたが、全体が元々揺らいている直線なので、完全な直線にしてしまうと逆に違和感が出てきます。これでも良いのではと考えました。

まず、そのまま単純に補正式を適用した場合、ジャギーと呼ばれるギザギザが現れて汚くなります。

Quadratic function : simple

同じ補正式でも、バイリニア補間でやってみると、綺麗になります。

Quadratic function : with bi-linear method


画像全体に渡って一様に変形してしまっているときは既知の初歩的な手法で補正できます。

例:斜めから撮影した画像を、あたかも、真上から撮影したかのように見える画像に変換できます。

Elementary method
撮影・スキャン時に、原稿が傾いたり、斜め方向から撮影したような場合は、この方法で上手く補正できます。


2021年8月5日木曜日

欠落した横線の復元

 私は可能な限りタブラチュアはファクシミリを使います。

保存状態がよく高品位なものは、そのまま使っています。Saizenayはその代表。ファクシミリの中には低品位なものもあって、その種類は色々ですが、背景のノイズを低減する方法を幾つかの曲集に適用したものは過去に紹介しました。

今回は、擦れて部分的に線が欠落した横線の復元。数本~数10本なら手作業で賄えますが、それ以上となると、とてもお付き合いできません。

かねてから構想していたアイデアをもとにプログラムを書き、やっとプロトモデルが出来上がりました。Baronの2重奏のファクシミリに適用してみました。この曲は師匠の手書きのタブラチュアを頂いているので、修復・復元は必要なく、評価用サンプルとして使ってみたまでです。




少し改良しました。

Before

After


2021年7月6日火曜日

Gallica - date de mise en ligne : 20/06/2021

Author  Title 
Luscinius, Othmar Musurgia seu praxis musicae. Iilius primo quae instrumentis agitur certa ratio, ab Ottomaro Luscinio Argentino duobus libris absoluta. Ejusdem Ottomari Luscinii, de concentus polyphoni, id est, ex plurifariis vocibus composti canonibus, libri totidem. 1536. [RES VMC-47 (1)] 1536 lute
Anonymous Tablature de luth. 1600-1699 [RES F-993] (G tune) 1600 lute
Divers auteurs Tablatures de luth (Tabulature italienne, copie d'une main française principalement). 1600-1699. [RES-1108] 1600 lute
Dufaut, François; Merville, Nicolas de Livre de luth de Bullen Reymes. 1630-1636. [RES VMA MS-1404]
Reymes, Bullen. / Mesangeau, René. / Gaultier, Ennemond. / Gaultier, Jacques. / Ives, Simon./ Bocan. / Moulinié, Étienne.
1630 lute
Divers auteurs
Lully, Jean-Baptiste  et al.
Pièces pour guitare à 5 cordes, 3 pièces pour luth à 11 cordes en tablature française, et 7 pièces diverses en notation ordinaire  1690.  [VM7-675]
Lully, Jean-Baptiste./ Hardel, Jacques. / Valleroy. / Mikielo, Angelo. / Du Genest. / Gaultier, Ennemond. / Corbetta, Francesco. / Hotman. / Juif. / Luigi./ Couperin, François.
1690 guitar
Rosiers, Nicolas de Nouveaux Principes pour la guittare, avec une table universelle de tous les accords qui se trouvent dans la basse-continuë sur cet instrument. Ce qui peut servir aussi aux personnes qui joüent du luth, du theorbe & de la basse de viole. Par Monsieur Nicolas Derozier,.... chez Christophe Ballard (A Paris), 1699. [VM8 U-13] 1699 guitar
Gallot, Jacques Pièces de Luth composées sur différens modes par Jacques de Gallot. Transcrites par Henri Quittard.  20 siècle. [RES-1605 (20)] 1900 lute

2021年6月10日木曜日

The Harp of Luduvíco

Fantasias, Arias and Toccatas by Frescobaldi and His Predecessors - Andrew Lawrence-King

10数年前、出張で東京に行ったときに立ち寄った銀座の山野楽器で購入しました。

ギターやリュート系の人にはお馴染みの曲が沢山収録されています。このアルバムはリラックスしたいときに時々聴いています。

実は、それまで、色々な場面で見聞きするハープ奏者は全て女性だったので、アンドリュー・ローレンス・キングも女性だと思い込んでいました。男性と分かったの2018年のHespèrion XXIの来日の時。メンバーの中にその名があり、間違いなく男性。開演前に調律中、終演後にハープを片付けている人。

会場ではこれとは違うCDを購入し、サインをいただきました。





2021年5月22日土曜日

BSテレ東 おんがく交差点

 リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパンでお世話になっている櫻田亨さんがテレビ出演されます。

リュートの演奏だけでなく、面白いお話も合わせて聞けると思います。


BSテレ東 おんがく交差点

2021年5月29日(土) あさ8時放送!



2021年5月12日水曜日

LSA Journal

3月30日にFacebook上でアナウンスがあったのを忘れていました。

LSA Journalが非会員にも公開されるようになりました。無償です。

The Lute Society of America Journal goes ‘open access’


2021年4月19日月曜日

Manuscrit Barbe

 Besançon図書館に所蔵されているManuscrit Saizenayはオリジナルのままでも明瞭なので、実用上は特に問題はありません。

一方、Paris BNFのManuscrit Barbeは退色が著しく、運指や装飾記号が実に読み取り難いです。しかし、Minkoffのリプリントでは修正・補筆が施されていて、本当に読み易いです。全ページをここまで仕上げるのは実に大変な作業で、Minkoffには感謝しかありません。

なお、このSarabandeではMinkoff版で弾くと不自然な箇所があります。オリジナルにはあった音が誤って消されていました。