2020年7月4日土曜日

バロック期のフランス語を読むための辞書

Dictionnaire de l’Académie François. 1694

“Luth”の項:
冒頭でリュートは「弦を弾いて演奏する楽器のひとつ」と説明するも、以降はリュートについて話すときに出てきそうな用語が羅列されていて、それらは何なのかは全く説明されていない。
「純化主義」により多くの語が排除されたそうだが、そうだとして、このような空虚な語の羅列は何なのだろう。知らない人には何を言っているのかわからないでしょう。
1762年版では綴り字が「改善」されてきてはいるものの、記述内容に変更はない。

Dictionnaire de l’Académie François. 1694


Dictionnaire Universel Francois Et Latin, Vulgairement Appele Dictionnaire de Trevoux. 1771
(Furetiere, Dictionnaire universel. 1690 を受け継いで進化させた辞書)

“Luth”の項:
リュートとはどんなものか説明している。時代と共に弦の数が増えたこと、ボディ、ボウル、ペグボックス、ネックなど各部の呼称や材料・構造、ガット弦が張られることや調弦についても触れている。ブローニュのリュートは良い材料を使いその音色も美しいと書かれ、価格まで記述されている。

Dictionnaire Universel Francois Et Latin, Vulgairement Appele Dictionnaire de Trevoux. 1771

幾つかのフランス語史に関する書籍や解説によると、Académieの辞書は偏狭な理想主義により、古語や新語、俗語、専門用語、写実的な言葉などが排除され、豊かさや多様性への配慮がない。
一方、Trevouxの辞書では、技術的・専門的な語彙も扱い、デカルトやメルセンヌらの自然学の理論家のフランス語の文章も用例としている。

ということから、その時代に書かれた文芸作品を読み解くにはTrevouxの辞書が有用であることは間違いはなさそう。