2021年2月24日水曜日

Tree Edition

 昨年末にTree EditionのAlbert Reyerman氏の訃報とともに、しばらく、休業状態になるとのアナウンスがありました。氏の功績にはリュートファンとして感謝したいと思います。

ただ、誰かが継いで再開するのだろうと思っていましたが、そうではないようです。

イギリスのリュート協会のWebページ上で、Tree Editionのこれまでの出版物のpdfが公開されました。ということは、Tree Editionが再開する考えはないということのようです。

pdfの公開に際して心配なのは、現在活動中の著作者の著作権、もっと細かく言うと、著作者の死後70年経過していない著作物の著作権の扱いです。著作権を出版社に譲渡する契約をしているのであれば問題ないですが。


2021年2月7日日曜日

Surface Pro 7

Macユーザーではない私にとって、iPad(9.7インチ)は使いたい機能が少ない中途半端な端末。

画面の大きいiPad Proを楽譜閲覧用にと一度は脳裏に浮かびましたが、これまでの資産の全てが共有でき、母艦と同様に本格作業ができるSurface Pro 7を選びました。

A4サイズより一回り小さいが、楽譜閲覧用には十分

OSはWindows10なので母艦と同じ作業ができる


2021年1月12日火曜日

ナットを調整

 バロックリュートの弦高が低くなるようにナットを調整しました。

ナットの溝を深くするのではなく、ナットの底面を一様に削っていく方法を取ります。

ナットの厚みがこれまでより1コースの外側で0.3mm、11コースの外側で0.4mm薄くなったところで取り付けてみると、1コースと1フレットの隙間は0.2~0.3mmになっているようです。

シムゲージがないので、公称0.1mm厚さの紙の枚数で測っているので怪しいですが。これだけの差で左手での押さえ易さが向上した気がします。しばらく様子を見る必要はあります。


PS:

Lundbergの本にはナットの作り方が大まかに書かれています。残念ながら、適切な溝の断面形状や綺麗に円弧状に掘る留意点、弦高はどのように調整するのかなど、微妙な部分は書かれていませんので、他からの情報も必要となります。

2020年12月30日水曜日

"Campanae Parisienses" 「パリの鐘」

Besard, Jean-Baptiste, 1567-1617

Novus partus sive concertationes musicae. 1617.

この作品集の中に納められている"Campanae Parisienses" 「パリの鐘」はレスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリアにも取り入れられてちょっと有名になったかも知れません。

この作品集は、以下の3つの図書館で参照できます。

(A-Wn) Österreichische Nationalbibliothek, Musiksammlung, Wien [MS75192-4°MUS MAG]

(D-Mbs) Bayerische Staatsbibliothek, München [BSB Mus.ms. 4123]

(US-Wc) The Library of Congress, Music Division, Washington, D.C. [M1490.B51]

残念ながら、古い印刷技術・製紙技術で作られたものなので、これら3つのどれも見ても、文字や横線の裏抜けが強くて読み取り難いです。

そこで、今回はUS-Wcの曲集から「パリの鐘」の部分をクリーニングしてみました。ここでは、エッジ保存型ノイズ除去フィルターとコントラスト補正、適応的な2値化処理を施しました。i7のPCで約1分かかります。大分、見易くなっています。完全にはノイズを落とし切れていませんが、パラメータを追い込めばもっと綺麗になるはずです。


Original (US-Wc) 



After Cleaning

2020年12月29日火曜日

フレットガット

 ロバート・ダウランドはVarietie of lute lessons(1610)にて、どのゲージをフレットに使うかを説明しています。


let the two first frets neerest the head of the instrument (being the greatest) be of the size if your countertenor, then the third and fourth frets must be the size of your great meanes: the fift and sixt frets of the size of your small meanes: and all the rest sized with trebles. These rules also serve for viols, or any other kind of instrument whereon frets are tyed.

また、luteshop.co.ukの記事では、以下のように読み直しています。

So the first two frets should be the same size as the fourth course (perhaps about .75mm), the third and fourth the same size as the third course (about .60mm), the fifth and sixth the same size as the second course (about .50mm) and the rest the same size as the trebles (about .40mm).

これは、Varietie of lute lessons(1610)の文章説明の次ページの図から、countra tenor = 4コース、great meane = 3コース、small meane = 2コース、treble = 1コースであることが分かるので、そのように言えることになります。


全体に細いゲージなので、それだけアクションも低く設定され、弾き易い楽器になるでしょう。ちなみに、この記事では、John Dowland (1610)とありますが、Robart Dowland (1610)の間違いです。

2次資料、3次資料からは確証が得られず、分からないことがあったりします。原典に接するとより広い知見が得られる可能性があるでしょう。時間的余裕があればですが。

2020年11月29日日曜日

LA GUITARE DU ROI - XAVIER DIAZ-LATORRE

Saturday 28th November
12am ET (New York) UTC/GMT-05:00
Concert of theorbo and guitar. French music from the Royal court of Versailles.

コロナ禍でのリアル・コンサートが難しい状況の中、このような充実した内容のオンライン・コンサートは本当にありがたいでですね。プログラムは4年前のブカレスト古楽祭のものと同じ内容です。XAVIER DIAZ-LATORRE氏に感謝です。
オンライン・コンサートですが、Youtubeにも保存されていますので、何時でも鑑賞することができます。

2020年11月16日月曜日

Giacomo Carissimi, Luigi Rossi

 久しぶりに Gallica を訪ねてみたら、9月に公開された楽譜がありました。

20 cantates pour voix seule et basse continue / Giacomo Carissimi, Luigi Rossi

Date de mise en ligne : 13/09/2020



2020年11月10日火曜日

Manuscrit, Vaudry de Saizenay (2)

 Manuscrit, Vaudry de Saizenay は、MINKOFFの倒産のためリプリントを購入できなくなりました。

2010年当時、パリ大学に留学中の息子に、大学かどこかの図書館でコピーが取れるものならと頼みました。結果、パリの国立図書館BNFにてMINKOFFのリプリントをコピーさせてくれたのでした。

実は、このリプリントはわざわざブザンソン図書館から取り寄せたものようで、コピー代の領収証も、添え書きの絵葉書もブサンゾン図書館のものです。パリのどの図書館にもリプリントがなかったのでしょう。


130ページくらいコピーが進んだところで、コピーを続けると本を傷めるし、コピー代がバカにならないし....。

丁度、この時、BesançonからCD-ROMを購入できると聞きつけ、コピーするのはここで止め、早速CD-ROM(エクセルの目次付き)を購入する手配をしたのでした。


現在はホームページから無料でダウンロードできますが、残念ながら画質がよくありません。



2020年11月8日日曜日

Manuscrit, Vaudry de Saizenay

ファクシミリのクリーニングのために専用のソフトウェアを開発してきました。

これまで、Saizenayに対しては試験的に適用しただけでした。というのも、Saizenayは保存状態がよく、汚れやシミ、破れ等がなく、そのままでも問題なく使えるページが殆どだったからです。

つい最近、裏抜けのために読み難いページがあることに気づいたので、これを機会に、全ページをクリーニングしました。元データはブサンゾン図書館から購入したCD-ROMに収録されている画像です。(今はホームページから無料ダウンロードできますが、画質が悪いです。)

[Pièces de luth et de théorbe] manuscrit, copie de Vaudry de Saizenay. 1699

227ページを例に、クリーニングの効果を確認します。オリジナルでは裏抜けが強く見苦しいですが、ノイズフィルタによって気にならない位に低減され、さらに、コントラストも強調したので見易くなっています。

残念ながら、スマホのような小さな画面では区別は困難かも知れません。


1) Original from Besançon

2) Noise suppressed & Contrast extended

3) Augmented Binarization